2007年08月04日

十勝とばん馬とやたら多い切符08

15日昼・帯広

真美:ふわ…ぁ…。
亜美:ん……うー。
犬 :双子だからって、同じタイミングで目を覚ます事はないだろうに。
真美:ごつごーしゅぎ、って言うんだって。
亜美:亜美達、どんくらい寝てたの?
犬 :2時間かな。まだあと1時間ほどあるんだけど…、でも、いいところで起きたかもな。外を見てみろ。
真美:うわ…、真っ白だね…。
亜美:雨?
犬 :降ってはいないみたいだけど、深い霧が出てるよな。
真美:兄ちゃん兄ちゃん! のーむだよ、のーむ!
犬 :こら、真美! それをお前とかが言ったら、春香には他に何も残らないだろ!
亜美:わんわんの方がひどいよー!
犬 :と言うかさ、濃霧っていうほど濃くはないんだけどな。
真美:でも…、んと…、げんそーてき、って言うの?
亜美:なんだか、すごいねー。
犬 :いま走ってるのは、北海道のど真ん中からやや南って辺りなんだ。この地図だと、西からきて、5キロ余りあるトンネルを抜けたばかりのところ。緑の矢印で示されているところだ。
真美:Aってシルシはなんなの?
犬 :気にしてはいけません!
亜美:えー!
真美:この線路、どーしてこんな、ぐねぐね曲がってるの?
犬 :具体的な数字は知らないけど、線路を引く時には、何キロの間に標高が何メートルまでしか変わってはいけない、って決まりがあるんだ。
亜美:あ、そーか。のぼれなくなっちゃったらしょーがないもんね。
犬 :地図にある新得(シントク)の駅は、標高190mくらいで、トンネルを抜けた辺りは400mくらいあるらしい。その差をクリアするために、線路が何キロ必要か計算して、その長さで、少しずつ高さが変わっていくように引いたから、こうなったんじゃないかな。
真美:なるほどねー。
犬 :と言いつつ、地図を手直ししている時に思ったんだが…、線路を敷く時に、本当は1回曲げた後まっすぐ帯広へ行きたかったのに、大人の事情でどうしても新得に寄らなければならなくなったから、かも知れない。
亜美:…でんしゃ作るのもタイヘンなんだね…。
真美:んじゃ、今いるトコって、だいぶ高いトコなんだね?
亜美:あっちの窓の外も、こっちも、ぜーんぶ山と森ばっかだね。
犬 :いい具合に天気が悪いお陰だよな、こんな景色は。ホントはもっと高い所も走ってきたんだけど、意外と晴れてて…、ま、それはそれでいい眺めだったけどな。
真美:でも、地図は見せてあげるのに、かんじんの景色はみんなに見せてあげないんだね?
犬 :写真撮ってないし。悔しかったら行ってみろ。
亜美:わんわんのオニーっ!
真美:わんわんのイヌーっ!

犬 :さあ、定刻通りに帯広到着! …しかしなんだな、ついさっきは有り難がった曇り空が、今は心配だよな。
亜美:雨、降らないといいね。
真美:見て見て! 駅の真ん前のあのビル、とかちプラザだって!
亜美:記念写真とろーよ、わんわん!
犬 :あのな、十勝にきて、とかちがあるのは当たり前だろ。
真美:あ、そっか。
犬 :プラザだけじゃない。そのまわりの建物もそうなら、そこから出てくる人、入っていく人、その辺を走ってる車だってとかち、お前達のライバルだと思っていいだろう。
亜美:なかなかてごわい相手だね!?
犬 :そうだ。この街にある物は、木々の緑から小鳥のさえずりまで、すべてがとかち…。まさにオールイズとかち。とかちイズエブリシングだ。
真美:わんわん、英語がおかしくっても、真美達じゃツッコめないよ?
犬 :う………。まあそれはともかく、記念写真撮るなら、せめてこっちで撮ろうよ。

mamischool.jpg

亜美:真美ばっかずるーい! ねえわんわん、亜美のもなんか探してよー!
犬 :ああ、亜美なら、特急でさらに1時間半くらい行ったところに、いっぱいあると思うぞ? 底引き亜美とか定置亜美とか。
亜美:わーいわーい!
犬 :納得した!?
真美:んでわんわん、競馬場へはバスかなにか乗るの?
犬 :いや、せいぜい1キロのところにあるし、白樺通って名前がつくくらいの道路に面してるんでわかり易いから、歩いていこう。確かめてみたい事もあるしな。
亜美:確かめたい事?
犬 :ああ。じゃ、行こうか。
真美:はーい!
犬 :てくてく…。
亜美:てくてく…。
真美:てくてく…。ちょっと寒いって思ったけど、歩くにはちょうどいいね? てくてく……? わんわん?
亜美:どうしたのわんわん? 楽しくなさそうな顔してるよ?
犬 :ちょっとコンビニ寄っていいか? 携帯の充電に使う乾電池を買い足さないといけなくてさ。
真美:うん。…そっか、それがしんぱいであんな顔…、わっ、わんわんどうしちゃったの!?
亜美:なんか知らないけど、怒ってるよー…。
犬 :あっ! …悪かった。覚悟してた以上だったんで、つい…。
真美:ねえ、なにかダメだったの?
犬 :いやごめん。すべては競馬場を見てから判断するよ。今は気にしないでくれると嬉しい。
亜美:うん…、いいけど、だったらわんわんも怒ってちゃやだよ?
真美:真美達までつまんなくなっちゃうよー。
犬 :そうだよな…。うん。それじゃ行こうか、ちょうどあと半分くらい。
亜美:はーい! てくてく…。
真美:てくてく…。あ、あれがそうなのかな!?
犬 :うん。府中や阪神なんかと比べたら小振りだけど、3階建てか4階建てくらいに見えて、建物の屋根が道路の反対側に向かって迫り出してる、典型的な地方の競馬場、メインスタンドだな。
亜美:せりだしてるのって、なんか意味があるの?
犬 :競馬の場内実況席とか、審判員が監視するための席とかは、なるべくコースに近く、見晴らしがよくないと困るよな?
真美:うん。しっかりレース見てなきゃダメだもんね。
犬 :だけど、メインスタンド前ってのは客席でもある。客席から見てコースを塞ぐように、そんな特別席を作るわけにはいかないよな?
亜美:そんなことしたら、お客さんがレース見れないよー。
犬 :だから、客席の邪魔をしないよう、地面から足場を組んだりしない代わりに、天井を大きく伸ばして、そこに放送席や審査員室を吊すんだ。
真美:ちょ、ちょっと待ってわんわん? んじゃ、そういうトコの下って、もしかして…。
犬 :うん、地面まで10メートルくらい、なんにもない。
亜美:こわいよー!
犬 :吊すとは言っても、天井が屋根にべったりくっついてるから、ゴンドラみたいに揺れる事はないんだろうけどな。…さあ着いた。
真美:うわー、お客さんいっぱいだね。
犬 :そうだな…。今日は日曜だから、いつもこれだけの人出があるわけじゃないんだろうけど、でもとりあえず、ちょっとした遊園地なみの人気は博してると見ていいんだろうな。
亜美:さっきと違って、ホッとした顔してるね、わんわん。
犬 :ただ、これだけの人出がどこから来てるのかって考えると、手放しでは喜べないんだよな。
真美:…? じもとの人じゃないの?
犬 :4月から始まった今年度の開催では、特に初めの頃は、それまでの帯広開催より数10%増という、大幅な入場人員アップがあったんだって。でもさ、去年の11月から、3月末まで同じ場所で同じような事をやっていた後の、ほんの半月で、それまでは競馬場に来なかった地元の人が、そんなにたくさん来るようになるとは思えないだろ?
亜美:んー。そんな気もするね…。
犬 :さっき俺が機嫌悪かったのも、根っこは同じ事なんだ。今日は競馬をしています、とか、次の競馬は○月△日です、とか、そういう案内の看板が、駅からここまでどこにも見えなかったり、割と近くのコンビニに、JRAの新聞はあるのに、ばん馬の新聞はなかったり…。なんと言うか、街、組織としての帯広は、競馬にあんまり関心がなさそうに見えた。
真美:ねえわんわん? 真美がべんきょーした時、一度はもうやめようって事になったのに、じもとの人達ががんばって、帯広だけは続ける事になった、って読んだよ?
犬 :うん。…あのな、どこまで本当かわからないけど、これだけ広い競馬場がなくなって、そこにデパートができたら、地元でお店をやってる人達が困るから、って説がある。これがかなり本当だとしたらさ、…もし、地元の人達にとって、ばん馬よりもっと面白かったり、もっと観光客を呼べたりする施設を作るって話になったら、地元の人達は頑張ってばん馬をやめさせるかも知れない。
亜美:んじゃ、大ピーンチって事?
犬 :うん。大企業がスポンサーについて、ネットを使った馬券発売システムの試みも始まって、これまで取り沙汰されてきたお金の問題、売り上げ低迷の問題は、これからよくなっていくかも知れないけど、実はニュースとかにあんまり出てこない問題の方が、重要で、心配なんじゃないかって思ってる。ま、これ以上を話し始めると、旅日記じゃなくなっちゃうからやめるけど。
真美:んじゃさ、今年になって増えたお客さん達って、わんわんみたく他のところからきたの?
犬 :そう考えるのが妥当だと思うよ。だとすると、ばん馬の興行面で考え直して欲しいところも出てくる。
亜美:どんな事?
犬 :…俺、せっかくきたんだから長くいたいのは山々なんだけど、どうしてもメインレースを見ないで札幌に帰らなきゃならないんだ。
真美:ええと…、電車がなくなっちゃうって事?
犬 :うん。これは逆にさ、どうせいちばん面白いレースまでいられないなら、もうちょっと早く帰っちゃってもいいかな、って考えられてしまうきっかけにもなりかねないと思う。先走って言っちゃうと、俺もこの後、雨降ってきたところで帰っちゃうし。
亜美:もったいないよー。せっかく遠くからきたんだよ?
犬 :客層の大半は、今まで通りの地元客だとしても、新規客の多くが他の街からの観光がてらだとすると、夏場の新機軸として打ち出したナイター開催はよくなかったんじゃないかって思う。
真美:いられるギリギリまでいても、急いで駅へ行って電車乗らなきゃいけないんじゃ、おみやげ買ってる時間もないよね。
犬 :そうだよな。さっきの話にも関係あるけど、ばん馬が地元に喜ばれるには、ばん馬のお陰で地元が潤わなきゃいけない。そのためには、競馬が終わってから、せめて2時間くらいは、街をぶらぶらしてられるようでないと駄目だろうな。…もっとも、札幌近くからきた人でなければ、今日みたいな連休を使ってきて、帯広に泊まる事になるんだろうけど…、
亜美:…けど?
犬 :2週間前にネットで調べたら、駅近くのホテルはもう全滅だった。まあこれは競馬主催者のせいじゃないけどさ、泊まりでくるとなると、もっと早くからプラン建ててないと駄目だって現状なんだよな。
真美:…ばん馬にくるのもたいへんなんだね。
犬 :まあ最悪、帯広を1時26分に出る夜行列車をホテル代わりに、朝には札幌に着く、って手もあるけど。
亜美:えー! 亜美、夜はふかふかのベッドかおふとんで寝たいー!
真美:真美もー! 夜中まで電車なんてやだー!
犬 :え……?
亜美:…どしたのわんわん?
真美:なんか、青い顔してるよ?
犬 :いや、いやいやいやいやなんでもないよ気にするな? …今日と明日どうやってごまかそうかな…。



posted by 負犬山禎之丞 at 22:39| Comment(0) | 徘徊録 | 更新情報をチェックする
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