2007年07月15日

十勝とばん馬とやたら多い切符04

14日午前・函館

真美:うわ…、やっぱ寒いね…。
犬 :ん、覚悟してたほどじゃないけど…、行き先が行き先だけになあ…。
亜美:競馬場って、寒いの?
犬 :主にフトコロが…。いやそうじゃなくて、まず風を遮るものが少ないし、暖かい空気が逃げていくのを妨げるものも少ない。
真美:そんなこと言われちゃうと、もっと心配になっちゃうよー。
犬 :悪かった。いざとなれば、二人は俺が暖めてやろ…
亜美:石ころにぎってグーです。
犬 :そうかよ…。
真美:とにかくいってみようよ。競馬場まではどうやっていくの?
犬 :駅からすぐのところに、路面電車の停車場がある。それで競馬場のそばまで行けるんだ。
亜美:あっ! 向こうの道路に電車っぽいの見えたよ! アレなんだね?
真美:なんかさ、時間はかかったけど、新幹線とかとっきゅー電車とか、チンチン電車にも乗れて、チョー面白いね!
犬 :…今時そう呼ぶ子供がいるとは思わなかったよ。…さて、停留所。
亜美:ホントに、道路の真ん中に線路があるんだね…。
真美:ホームのすぐ側をクルマが走ってくよ?
犬 :ここは道路の角っこで、車もスピード出してないから平気だけどね。まっすぐな大通りの真ん中だったりすると、背中をビュンビュン通って行く感じでスリリングだ。
亜美:あ、電車きた…。うわー、チョーメチャ混みになったよ?
犬 :みんな行くところは同じだから。…実を言うと俺、どこで降りたらいいのか知らないんだけど。
真美:ちょっ、ちょっと待ってよわんわん…。
亜美:ダイジョーブだよ真美! あの辺のけーば新聞持ってる人についてけばいいんだよ!
犬 :おお、よくわかってる。始めていく競馬場では、同類だけが頼りなんだな。…広島の福山に行った時なんか、駅前の売店で新聞買って、バスはどこから出るのか訊いたら、わからないって言われてさ…。ホント、むさ苦しいオヤジだけが道標。
真美:けーばの神様だね!
犬 :いや違うが…。というか、地元へのアピールが足りないんじゃありません? 福山競馬さん?
亜美:うー、つかまって立ってるのも大変だよー。なんぷんくらい乗るの?
犬 :だから、わかんないって…。25分くらいらしいとは聞いてるけど…。じゃ、時間潰しに競馬のお話。
真美:なになに?
犬 :函館競馬場の住所は、函館市駒場町。見るからに、馬にゆかりのありそうな地名なんだな。
亜美:へー。
犬 :というか、ゆかりがあるどころか、函館の街は、日本競馬のもう1つの起源と言っていい場所なんだ。
真美:も1つ?
犬 :そもそも日本での競馬は、幕末から明治にかけて、外交や貿易のためにやってきた外人さん達が始めたもの。とにかく競馬がやりたくて、広いところ見つけては囲い込んで、始めは日本にいた馬だけ、そのうち中国から輸入して走らせた。それが横浜とか東京とかでの事で、こっちが最初の起源。
亜美:ふむふむ。
犬 :当然、馬主も騎手も、調教師も外人ばっかりだったけど、それじゃ数が足りない。そこを補うように、日本人も興味を持ち始めて、次第に日本人の騎手や馬主が増えていった。
真美:うん。そんで?
犬 :で、どうやら日本人騎手として初めての勝利を飾ったらしいのが、斎藤大経という人。1870年、明治3年の事。記録がしっかりしてないんで、本当に初めてかどうかはわからないんだけどね。
亜美:んじゃ、亜美がドクガンとヘンケンで初めてとにんてーしちゃいまーす。
犬 :ちなみに、もう少し後になって、馬主として初めて勝利した日本人は、西郷どんの弟、西郷従道。愛馬の名前は「ミカン」
真美:変なのー。
犬 :外国人が羽振りを利かす中にあって、意地になって日本語を片っ端から使ってたんじゃないかと思う。
亜美:そっかー。
犬 :さて、斎藤大経の話に戻すと、そのレースは御前競馬、つまり明治天皇が見ていた。後に馬キチとしても有名になるミカドも大興奮して、斎藤騎手に馬術と牧用とのための土地を函館に与えたのみならず、これ以後は函館という苗字を名乗るように命じたそうだ。
真美:あ、んじゃ、そんときの土地が、いまの競馬場なの?
犬 :あー。それはわかんないんだけどね。実際のところ、今とは違って、北海道は競走馬の産地としては、ほとんど栄えなかったみたいだ。俺も記録に詳しくはないけど、JRAの前身が発足する前の、函館や札幌で行われていた競馬に出ていたくらいじゃないのかな。
亜美:ふーん。
犬 :例えば日本ダービーで北海道産の馬が勝つのは、1944年、昭和19年まで時が経ってからの事になる。それからまた時を経た今だって、馬産地は函館よりずっと奥にしかないしね。…そうだ、午後に乗る特急では、左側の席を探そう。うまくすれば、函館を出て2時間半くらいで、放牧中の馬が見えるかも知れない。
真美:見えるの!?
犬 :うん。線路沿いに放牧地がいくつかあるんだ。…話を戻すよ。そういう事情はあるけれど、駒場って地名を見ると、函館大経時代からのゆかりがありそうな気はするね。
亜美:なるほどねー。
犬 :函館大経先生の残された功績は、馬よりも人、そして技術。例えば、大経先生の勝利から62年後の1932年、第1回日本ダービーを勝った騎手は函館孫作。
真美:あ、じゃお孫さんなんだね?
犬 :あー。たぶん違うんだよね。孫作先生はダービー勝った時50歳だったみたいで、大経先生と33歳しか違わないそうだ。…孫弟子に当たるようだから、元の名前から改名したのかも知れないね。
亜美:んじゃ、真美もわんわんにプロデュースしてもらってっから、犬真美に変えなきゃ!
真美:亜美が変えてよー!
犬 :大経先生との間に、函館大次先生がいるみたいだから、大次先生が大経先生の弟で、孫作先生は大経先生の甥って事かも知れない。
亜美:なるほどねー。
犬 :大経先生のお弟子さん達の中には、武豊のひい爺さんもいるね。血縁と師弟関係は一致しないから、武豊自身は、大経先生からの連なりには入らないんだけどね。
真美:ダンダン真美達にわかんないお話になってきたところで、けーば新聞もったおじさん達が降り始めたよ?
犬 :よし行こう!
亜美:うわ…、電車の中、いっぺんにガラガラになっちゃったね! …わ、わんわんっ!?
犬 :………危なかったな、今……。
真美:ホーム狭いからって、道路に出ちゃダメだよー!
亜美:さっき、自分でそんなコト言ってたじゃん!
犬 :いや、出るつもりじゃなかったんだけど…。電車降りた途端に冷たい風に吹かれたら、急にフラフラッと…。結局ゆうべ眠れなかったのも響いてるのかな…。
真美:ダイジョーブなの…?
犬 :もしヤバくなったら、支えてくれよな?
亜美:石ころにぎってグー…とか言ってらんないふんいきだよ…。
犬 :…よし! たいした事はない! さあ馬だ!
真美:わ、わんわん? ハナミズ垂れてきたよ?
犬 :さあ撮るぞ! パドックだ! ゴール板だ!
亜美:わんわん、声がちょっとガラガラしてきちゃったよ?
犬 :さあ食うぞ! じゃがいも! モツ煮! 豚汁! たこ焼き!
真美:わんわんってば! 足が痛いって言ってたの、ダイジョーブなのー?
犬 :さあ勝負だ! まずは3レース、ラブハニーからブラックレディへの馬単一点でどうでしょう。
亜美:うわっ! ミキミキと、はるるんみたいだねっ!
犬 :さあスタート! ラブハニーが逃げて行きます!
真美:♪じゃあねなんてい〜わないぃで〜。
犬 :そして3コーナー過ぎで失速…。
亜美:………。
真美:ミキミキ、ビリになっちゃったね…。
犬 :亜美、真美。
亜美:ん?
犬 :午前中のは終わったし、…帰るか。
真美:つか、わんわんマジ熱とか出てない?



posted by 負犬山禎之丞 at 00:34| Comment(0) | 徘徊録 | 更新情報をチェックする
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