2010年07月08日

今日の問題 「法貨」

犬   :リディア先生! リディア先生っ!
リディア:あら負犬山くん。1週間空いてしまったではないの。
犬   :申し訳ない事です。「実写映画化された漫画・ゲーム」を問う多答クイズを作ろうとしていたんですが、マジックアカデミーですでに出されていたんですよ。
リディア:あらら。
犬   :お陰でその問題は正解できましたけど、選択肢の一部に同じ作品を使っているものを、ここで出すのは躊躇われますからね。
リディア:まあ、賢明な判断ね。
犬   :もう1つ、途中まで進めていた問題もあったんですが、そちらは僕自身がきちんと咀嚼してからでないと出せないと思いまして、結局先週はお休みしてしまいました。
リディア:なるほど。それでは仕方ないわね。たとえ誰も見ていないブログとはいえ、迂闊な事を書いてはいけないわ。
犬   :とはいえ、このところロクな記事を書いていませんから、なんとかしないといけないだろうと思っていたところで、軽く1問思いつきましたので、今日はそちらを。
リディア:ふーん。…これ、ジャンルは何になるのかしらね。
犬   :いちおう法律絡みですから、社会という事で。
リディア:そうやってこじつけでもしないと、ここのクイズって、すでに雑学ばかりだものね。
犬   :やっつけ仕事で作ったようなものですから、簡単かも知れませんが、ちょっとの暇つぶしにでもして頂ければ幸いです。

  日本国内で、法律上、普通硬化だけで一度に精算できる金額の上限を答えなさい。



リディア:小銭ばかりで買い物をしようとすると、お店に断られてしまう、なんて話を訊いた事がないかしら?
犬   :よほどの枚数でもない限り、実際に断られる事はないと思いますけどね。僕も店員だった頃には何回か受けました。たいてい相手は子供ですし。
リディア:断れないわよねえ。
犬   :4000円くらいの品を「母の日のプレゼントにして下さい〜」とか言われたら、なおさらですよねえ。あの時は100円玉が5枚くらいあったかなあ。
リディア:…あとはそれ以下の小銭だけという事ね?
犬   :さて、この断られる云々という話の根拠は、1987年6月に制定された「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」の第七条にあります。ただし「断っていい」などの直接的な文言は、同法のどこにもありません。
リディア:七条には「貨幣は、額面価格の二十倍までを限り、法貨として通用する」とあるの。
犬   :クレジットカードや電子マネーが、店によって使えたり使えなかったり、使える規格が違ったりしても、不便を感じても不合理は感じないと思います。ですが、現金までがそうだったら、不合理を感じるどころか生活に支障をきたすでしょう。
リディア:だから、法的に「強制通用力」を付与する通貨を定め、これを使った取引は原則として拒否できない事になっているの。
犬   :詳しくは語りませんが、こちらは「日本銀行法」で定められています。強制通用力には、もう1つ、通貨自体の価値にかかわらず、額面通りに通用させる働きもあります。
リディア:一円玉は1円では造れないと聞いた事があるかしら? 逆に紙幣は20円くらいで造れるそうね。でも、財務省印刷局が発行した日本銀行券なら、壱万円と書いてあれば1万円として通用する。当たり前の事だけれどね。
犬   :こうして通用力を政府に認められた通貨が、日本における「法貨」です。一方で、法貨とされていない通貨は、どれだけ高額でもお買い物などには使えないようになっています。
リディア:当たり前の例としては、外国の硬化は日本国内では法貨にならないわね。「今日の相場では何円相当だったから、それとして受けてくれ」と言ったって駄目。しかるべきところで両替してこないとね。
犬   :さて、法貨を使った取引は「原則として拒否できない」制度の、例外の1つが例の法律、第七条なんです。
リディア:額面価格の二十倍を限り通用する、つまり、ある貨幣は一度に20枚までしか通用しない、法貨と認められないわけ。
犬   :裏読みしますと、一円玉を30枚持ってきても、20円としかみなされない、という事になります。あくまで裏読みですが。
リディア:断っていい、という言い方は厳密には違うのかしらね。お店の側がどうこうではなくて、お客さんが、使えない、と言うべきかしら。
犬   :また逆に、お釣りとしてお店からお客さんに渡る貨幣も、七条の適用を受けます。もちろん十円玉20枚で返すなんてサービス悪すぎますが。
リディア:なお、厳密に規定されてはいないけれど、貨幣といえば、この場合硬貨を指すの。だから第七条は、紙幣には適用されないわよ。
犬   :余談ですが、例外のうちにはもう1つ、法貨であっても使用を断り得る場合があります。極めて稀ですけれどね。
リディア:偽造五百円玉は自動販売機で使われるだけだったけれど、大量に出回ったために、旧五百円玉の信用が著しく下がってしまったでしょう? 新しいものに変えざるを得なかったほどに。
犬   :それよりさらに10年ほど前の事で、覚えていらっしゃらないかも知れませんけれど、額面十万円の記念硬貨が、素人目には真贋の区別をつけられないほど精巧に偽造され、何万枚も出回った事がありました。
リディア:この件が広く報道されて以降、この硬貨には法貨としての信用がないに等しくなってしまったのね。こういった事情があれば、お店などは受け取りを拒否できるの。もちろんこの他にも、見るからに違和感がある硬貨は、偽造の疑いを理由に断れるのよ。
犬   :では、余談はこれまでにして、クイズの答え合わせをしましょう。
リディア:現在日本で法貨とされている普通硬化は、一円、十円、百円と、それぞれの5倍額と、合わせて6種類。1枚ずつ合計すると悪魔の数字、666円よね。
犬   :これを20倍した、1万3320円までが、日本国内で法律上普通硬化だけで精算できる金額の上限です。
リディア:実際にやるかどうかはともかく、思っていたより高いのね。
犬   :なお、裏付けとなる法文が見つけられなかったのですが、例外のもう1つに、税金などを納める場合には、20枚制限が適用されないとも聞きました。
リディア:それから、自動販売機やATMなど、硬貨が使える機械は、例の第七条とは関わりなく、機体ごとに制限があるはずだから気をつけてね。
犬   :鉄道の近距離切符券売機では、金種を問わず合わせて20枚までだった気がするとか、銀行ATMでは108枚だった気がするとか…。いい加減な事を言いました。
リディア:豆知識として、無人サービスではない、窓口がある銀行に併設されたATMでは、小銭の預金ができるから、知らないうちにザクザク貯めてしまう癖がある方は頼りにしてもいいと思うわ。
犬   :たいていは小銭だけの引き出しはできませんが、残高の1000円に足りない分を入金してからまとめて引き出す、という小技もありますね。
リディア:それでは、負犬山くんがこれ以上みみっちい豆知識をひけらかす前にお終いにするわね。
犬   :蔑んだ目で見られた!



posted by 負犬山禎之丞 at 16:57| Comment(0) | 朦朧堂、衒学の間 | 更新情報をチェックする
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