2010年06月23日

今日の問題 「小惑星」

犬   :リディア先生! リディア先生っ!
リディア:あら負犬山くん。ウソつき超人にはなれた?
犬   :一進一退、なんとか大きく後退しないで粘っているところです。
リディア:うーん。苦しんでいるわねえ。
犬   :遙か遠くの宇宙からサンプルを採ってきたかも知れないというのに、ゲームのタイトル1つがどうして獲れないのかと…。
リディア:きっと、あなたがもがいている電網の海も、負けず劣らず深くて広いという事ではないかしら?
犬   :うまい事を言って下さいましたが、その喩えに挫けてしまいそうです!
リディア:あら。だったら、海面下1500メートルで噴き出す原油を止めるのと同じくらい困難、程度にしようかしら。
犬   :そんな深刻な問題ではないと思います…。
リディア:さて、海底の事については、残念だけれど心配するしかできないから、今日は宇宙の遙か向こうに目を向けましょう。
犬   :では、こんな問題を。

  1万5000番までの小惑星につけられている名前。
   ヤキイモ  ユナイテッドネイションズ
   東京大学  ジーザスクライスト
   ありがとう 北斗星
   埼玉    ヒデキマツイ
   宮沢賢治  新撰組
   高槻    弥生
   菊地    真



リディア:選択肢がいつもより多くない?
犬   :若干時宜を逸しましたが、慶事ですから。
リディア:まあ確かに。
犬   :『クローズアップ現代』で採りあげられた時、5歳の男の子が「はやぶさ君」の帰還を心待ちにしているという内容の手紙が紹介されてました。
リディア:微笑ましいわねえ。
犬   :人は何歳を過ぎると「はやぶさたん」と呼ぶようになるんでしょう?
リディア:それは年齢ではなく趣味の問題だと思うの…。まあ、古来西欧では船舶に女性名をつける事も多かったわよね。"she" で船を指している例も少なくないし。
犬   :サンプル回収装置がニーソックスに見えた方がいらしたそうです。
リディア:なんという想像力!
犬   :南十字星に見守られて火の鳥になったはやぶさが、たった1つ産み落とした卵からは、いったい何が孵るのでしょう。
リディア:楽しみねえ。
犬   :さて、はやぶさが目指した小惑星イトカワ。小惑星番号は25143。はやぶさ打ち上げ時点では、まだ名前がついていませんでした。
リディア:到達目標を探していた頃の1998年に、マサチューセッツ工科大学のチームが発見した小惑星なの。命名権はあちらが持っていたのだけれど、はやぶさの目標と決まった時に、亡き糸川英夫博士の名をつけてくれと、日本チームがお願いしたのね。
犬   :こうして、2003年5月9日にはやぶさが旅立ってから3ヶ月後、8月6日に承認され、正式に命名されました。
リディア:ところで、報道などではカタカナが使われているけれど、別に漢字で書いてもいいのよ?
犬   :厳密を期すなら、登録された欧文表記だけが正しいという事になるでしょう。逆に、厳密を期さないならどうでもいい、と。
リディア:番号4288番の小惑星は、欧文での名前は "Tokyotech"
犬   :でも、日本には「東京工科大学」と呼ぶ方が多いようです。
リディア:同じように、日本では登録名そのものではなく、日本語で呼ばれる事が多いのが、ぴったり6000番の「国際連合」 というわけで、まず1つ正解を発見!
犬   :なぜここではカナ書きしたのかといいますと、命名の理由をお話しするのに通りがよさそうだからという程度の事です。…その話は若干長くなりますので、最後に回しますね。
リディア:さて…、イトカワのような日本語名前の小惑星のうち、もっとも早く発見されたのは、498番の「東京」
犬   :1900年に平山信さんが見つけて発表したようですが、この時には軌道を割り出せずに終わってしまいました。02年に改めて発見され、本来ならその方に命名権がいくはずでしたが、平山さんに譲られたようです。
リディア:平山さんは同時に、727番の「ニッポニア」も見つけて、後に同じように命名権を譲られたみたいね。
犬   :日本人が軌道まで確定させて発見した最初は、27年に及川奥朗さんが発見し名付けた1088番「三鷹」と1089番「多摩」とですね。
リディア:このような、日本語名がつけられた小惑星は、おそらく現時点でも1000を超えていると思うの。
犬   :1万5000番までしか確かめてませんけどね!
リディア:手抜きねえ。
犬   :だって…、1万2000番を超えた辺りからは、名前がついている小惑星自体が稀になってしまうので、クイズに使えそうなものを探すどころじゃありませんよ…。
リディア:だから、ここではハズレだとしても、1万5001番以降に存在する可能性もあるの。
犬   :いちおう、ハズレのものは「小惑星 ○○」で検索してもヒットしない事だけは確認しました。
リディア:では、そろそろ選択肢を見ていきましょう。
犬   :今回は、ハズレを先に浚ってしまいますね。東京大学、ジーザスクライスト、ありがとう、ヒデキマツイ。以上4つです。
リディア:さっき紹介した通り、東京工科大学はあるのだけれどね。
犬   :「イエス」という小惑星がありますが、これは同名のロックバンドに因んだものだそうで、キリストとは直接の縁はありません。
リディア:ありがとう、はないけれど、名詞ではない言葉がつけられた小惑星もあるのよね。「おるけ」だったかしら。
犬   :そばにいるからね、という意味合いの土佐ことばだそうです。なぜ標準語じゃなく、お国ことばが使われたかというと、高知には日本を代表する天文家、関勉さんがお住まいで、この名前は地元の方から募った候補の中から選んだそうです。
リディア:「イケヤ・セキ彗星」は、子供向けの科学本でも、よく紹介されていると思うの。関さんは、彗星を6つ、小惑星は200以上も発見なさっているわ。
犬   :土佐といえば、龍から馬のつく討幕運動の人。関さんは小惑星に歴史上の人物の名を多くおつけになっています。5818番「新撰組」も。
リディア:こんな名前でも小惑星自体は1つよ?
犬   :最後。ヒデキマツイはありませんが、日本人の野球選手から採られた名前は、衣笠、奈良原、田中幸雄、岩村、津田などがあります。…英雄というのも、発見が94年だからして、野茂さんに因んだものではないかと思います。
リディア:以上4つを除いた10個、8865番ヤキイモ、6000番ユナイテッドネイションズ、5374番北斗星、5618番埼玉、5008番宮沢賢治、5818番新撰組、4508番高槻、4072番弥生、4743番菊地、6093番真。これらが今日の正解です。
リディア:やよい、ではないのが残念だけれど、小惑星の名前を繋ぐとアイドルになるって、偶然というのも凄いわねえ。
犬   :まさにスターですね!
リディア:小惑星は「アステロイド」だけれどね!
犬   :「高槻」が発見されたのは1990年の3月27日、「真」は同年8月30日。
リディア:それがどうかしたの?
犬   :やよいちゃんの誕生日は3月25日、真クンのは8月29日です。
リディア:なんというニアピン!
犬   :さて…、いくつかの小惑星について、一言ずつ付け加えていきましょうか。
リディア:ここでは「ヤキイモ」を選んだけれど、「たこやき」というのもあるの。これはテレビで紹介された事があったと思うわ。
犬   :「北斗星」は寝台特急に因んだものですが…、いちおう別の星の名前ですけどいいんですかね。
リディア:「埼玉」の他に「さきたま」というのもあるわね。同じように「山形」の他に「山形市」があるわ。
犬   :「宮沢賢治」は、自身の他に弟の「宮沢清六」も採られています。
リディア:他に、日本語名の小惑星は、ざっと目に留まったものだけをあげても、天体工場、こどもの森、夕焼小焼、日本書紀、古事記、万葉集、座敷童子、仮面ライダー、トトロ、小松左京、早見優、庵野秀明、エコ足立。などなど。
犬   :「早見優」は、歌番組の中で、認定機関の方から本人へ、証明書のようなものを手渡していた覚えがあります。…もちろんご本人が発見したわけではありませんよ?
リディア:講談師の神田紅さんの名前も採られているわね。これもご本人の発見ではないけれど、神田さんはアマチュア天文家の会に名を連ねる愛好家でいらっしゃるそうよ。
犬   :ざっとこんなところですかね。
リディア:ところで、さっき言及した「山形」と「山形市」と。小惑星番号は、それぞれ7039、10864だけれど、発見されたのはそれぞれ1996年、1995年。山形市の方が先なのね。
犬   :「東京」の頃には、軌道が確定されるまで「発見」とはみなされなかったのですが、現在はそうではないようです。後述しますが、今では、新たに見つかる数がべらぼうに多くなっているんですね。だからとりあえず、新たに見つかった時点で、誰の手柄かはっきりさせる必要があるわけです。
リディア:小惑星番号は、軌道が確定された時点で割り振られるの。見つかってから番号が与えられるまでの間は、「仮符号」というもので区別するのね。
犬   :「ユナイテッドネイションズ」の仮符号は、1987 UN。 名付けられた理由はもうおわかりでしょう。
リディア:いちおう符号の説明をしないとね。最初の数字4桁は、見つけられた年。2つのアルファベットは、見つけられた時期と、その時期に見つけられたいくつめの小惑星であるかという事を表すの。
犬   :より詳しく説明する前に、どちらのアルファベットもIの字を使わない事を記憶に留めて下さい。おそらく、手書きされた際に1やJと見まちがえる事を避けているのでしょう。
リディア:まずは時期。例えば、1月の15日までに見つけられた小惑星ならA、16日から月末までならB、2月の15日までならC、…と、1年を24節に区切って、AからYまでで表すの。
犬   :Uですと10月の下半期を表しますね。
リディア:見つかった順番は、1つ目がA、2つ目がB、…25個目がZ。
犬   :Nですと13個目を表しますね。
リディア:26個目が見つかったら、A1 、27個目は B1 と、数字を振っていくの。
犬   :51個目は A2 、76個目は A3 とします。
リディア:イトカワの仮符号は、1998 SF36 だから、1998年9月下半期に、906番目に見つけられた小惑星だという事ね。
犬   :半月で900とか、凄い勢いで増えていますよね。
リディア:…1902年に発見された東京が498番。27年の三鷹、多摩は1088、1089番。少し下って50年に見つかった「広瀬」は1612番。
犬   :ずっと下って、80年代以降になると発見順と小惑星番号との繋がりが薄くなりますから、数の目安とはし難くなりますが…、89年発見の東京工科大学は4288番。それから5年後の94年には、早見優6880、庵野秀明9081、トトロ10160、エコ足立12391…と、かなり幅がありますが、発見された数が飛躍的に増えている事はおわかり頂けるでしょう。
リディア:90年前には500個前後だったのにね。
犬   :イトカワは98年、25143番。
リディア:2006年に惑星ではなくなってしまった冥王星は、その時点で最新の番号を与えられて13万4340番。
犬   :そして現在、番号がつけられた小惑星などは、20万個を遙かに超えています。
リディア:イトカワなどを発見したMITのチームでは、観測・探索から軌道計算までを自動化した発見システムを完成させているそうなの。もはやアマチュアの力が及ぶところではなくなっている一方、次から次へと発見を続けるチームには、小惑星全てに名前をつける余裕がなくなってもいるのよね。
犬   :いずれ命名権ビジネスとか生まれるかも知れませんが…、ほとんどの小惑星には、現時点で名前がありませんし、名付けられる機会もないままになるでしょう。
リディア:もとより地上から肉眼ではまずみられないものだから、と言ってしまうと味気ないけれど、名前のないままで置かれるのも、それはそれでロマンめいたものがあると思うの。
犬   :その方が、未知の世界、という感覚が強まるかも知れませんね。
リディア:それでは、今日はここまで。



posted by 負犬山禎之丞 at 17:56| Comment(0) | 朦朧堂、衒学の間 | 更新情報をチェックする
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