2009年12月18日

今日の問題 「歌い出し」

犬   :リディア先生! リディア先生っ!
リディア:あら負犬山くん。今度はまた、時間をおかずにきたじゃないの。
犬   :はい。読者のみなさんに急いでお伝えしなきゃならない事があるんです!
リディア:ふーん。…さては『ケロロ軍曹』の謎に気づいたのね?
犬   :…ひょっとして…、わかってたなら教えてくれてもいいじゃないですか!
リディア:だって私の担当科目ではないもの。
犬   :……先生らしくて納得しちゃいました…。で、訳題が『カエル軍曹』になった理由なんですが、考えてみれば大した事じゃありませんね。英語圏のカエルはケロロケロロとは鳴かないから、ってだけでしょうね。
リディア:それでいいと思うわ。英語には、動物の鳴き声として使われる擬態語がほとんどないの。代わりに「○○が鳴く、吠える」という動詞を使うのね。
犬   :へー。
リディア:その動詞は、他の意味に転用されたり、逆に、他の意味があった言葉を転用していたりするの。ライオンなどが吠えるという意の"roar"は、暴風や雷、大砲の音が轟くという意でもあるのね。カエルやカラスに使われる"croak"という言葉には、しわがれ声を出す、とか、人間が大騒ぎする、とかいう意味があるわね。
犬   :なんだか、いい言葉じゃありませんね。
リディア:どのくらいの頻度で使われるかはわからないけど、米俗語では殺すという意味もあるようだわ。
犬   :なるほど。そこまで考えると、漫画の題名とするにはよろしくありませんね。
リディア:それと、ついでだから触れておくと、日本では、種別を問わない場合には「カエル」と一括りにしているけれど、英語圏では"frog"と、主にガマガエルとヒキガエルとを指す"toad"と、2つに分けて括るものなの。…さて、この話はここまでにして、今日のクイズは?
犬   :待って下さい。もう1つお伝えしたい事が。
リディア:え? ついにウソつき超人。
犬   :鋭意努力してますからそれはもう少し待って下さい!
リディア:じゃあ、何を伝えたいというのよ?
犬   :お陰様で、シルバープロになれました!
リディア:おめでとう! …あ、よかったらここに座って?
犬   :いえ、すぐ降りますから…じゃなくって!
リディア:それにしても、1億パワーねえ…。この貧相な顔と身体に。
犬   :あんまり苛めると、抱きついちゃいますよ!
リディア:やめてえ! 負け犬がうつっちゃうわ! …それはそうと、パワーを貯めただけでは、シルバーにはなれないはずよね?
犬   :ええ。1億パワー到達直後の5試合で、3勝して合格です。
リディア:プロテスト、ブロンズテストは、3回または4回、決勝に残ればよかったけれど、優勝が条件となるとなかなか厳しそうね。そこは、よく頑張ったと誉めてあげるわ。
犬   :ありがとうございます。僕も、簡単には済まないと思ってましたけど、できるだけの準備をしておいたお陰か、1発で合格できました。
リディア:ふーん。…準備って?
犬   :はい。9950万パワーになった頃から、わざと順位を抑えて、SSS1リーグからSS3リーグまで落ちておきました!
リディア:卑怯者がいるわ!
犬   :各リーグ5試合を2位、2位、2位、4位、4位で回して、決勝進出率を保ったままリーグだけ下げるように頑張りました!
リディア:しかもセコいわ!
犬   :でも、晴れて1億パワーになったはいいんですが、テストはSS2リーグ以上でないと受けられないと言われちゃいました。
リディア:策士策に溺れるとはこの事だわ!
犬   :では、気分よく今日のクイズを出しましょう。
リディア:私は別に気分よくないわよ!?

  『小倉百人一首』に選ばれた歌の、5首以上で歌い出しに使われている音(オン)
    つ   こ
    な   や
    わ   さ
    す   は
    た   よ

犬   :音、とするよりは、字、とした方が、和歌を鑑賞したりする場合の伝統に沿ってはいるんですけど、万一、漢字で始まる歌は対象外だと誤解されてはいけませんので、字、とするのは避けました。
リディア:ただ、音を重視すると今度は、上代日本には濁点を打つ書法がなく、清音も濁音も書き分けられていない事に対する注意を払わないとならないわね。
犬   :選択肢に入れた音の中で引っかかるのは、34番の歌にある「誰をかも 待つ人にせん 高砂の…」でしょうかね。
リディア:この歌での「誰」は「たれ」と読む事になっているのよね。昔はこの言葉は清音で発音するのが普通だったみたい。
犬   :黄昏、という言葉は、辺りが暗くなって、遠くのものがよく見えなくなってきた頃に、向こうからきたあの人は誰? という「誰そ彼」から生まれた…、という説は、そうでなければ生まれません。
リディア:さて、そろそろ解説に入りましょう?
犬   :まあ、問題の答え合わせ自体は簡単ですね。試しに、歌い出しの音だけを抜き出してみましょう。

あはあたお かあわはこ わあつみき たちなわ いつこな
おみやこあ あやひたひ なしわあし こちあああ ゆやかみき
かあなわた ああやお いよいあう もはこあ ゆおたうち
ああな およなよ ななたみ きわよみお はこかひも

リディア:……ふっかつのじゅもん……。
犬   :太字で目立たせている音は、ただ1首だけでしか歌い出しに使われていないものなんです。これらを使った7首を、俗に「一字決まり」と呼んでいます。
リディア:また、同じ音で歌い出す歌が複数あっても、早ければ2音目、遅くとも6音目には、100首の中で1首だけを確定できるのね。その決め手となる音を「決まり字」と呼んでいるの。
犬   :…やっぱり、音とはしない方が、紛らわしくなかったでしょうか…。
リディア:一字決まりの7音を並べ替えて「娘、房干せ」むすめふさほせ、という早覚えもあるわね。
犬   :というわけで、選択肢の中からは、「さ」「す」が真っ先に外れます。
リディア:では、もう一度ふっかつのじゅもんを書き出して、数え易いように色を着けてみるわ。

お かあ みき ちす いふ
おみあ あひ あし ちあああ ゆかみき
かあ あめあお いいあう もあさ ゆおうち
せああ ほお み きみお かひも

犬   :それぞれが使われた数はこの通りとなります。

2 6 8 4 7 さ1 す1 4 6 

リディア:というわけで、5首以上で使われているのは、「こ」「な」「わ」「た」の4音。以上が今回の正解ね。
犬   :なお、もっとも多い音は、やはり「あ」で、17首に使われています。
リディア:ただし「逢ふ」は、上代では「おう」と発音されていたとして、かな書きでは「あふ」となるけれども、「お」のグループに入れる論もあるの。この論では、あ音で始まる歌は16首となるわね。
犬   :あ音が多くなった理由を考えてみますと、もっとも多く歌われている季節が、秋…であるのは確かですが、ズバリ「あき」と始まる歌は2首しかありません。
リディア:朝方、早朝の時間帯が多く歌われている事が、あ音が多くなった理由と言えるかしら。朝、はもちろん、有明、なども当たるわね。
犬   :早朝の清々しさが好んで詠まれた…のではなく、夜明けが近づくと貴方は帰ってしまうのね…、という事で。主題としてもっとも多いのは、恋ですからね。
リディア:恋歌だから「逢ふ」「あはれ」などが使われがち、という理由もあるわね。そしてもう1つ、あで始まる枕詞が多い事もあげられるでしょうね。
犬   :さて…、百人一首をテーマにしながら、紹介したのがふっかつのじゅもんだけではナンですので、ここで一気に100首…の第1句だけをリストアップします。
リディア:経験のある人は、第2句以降を思い出せるかどうか試してみてね?

01 あきのたの  はるすぎて  あしびきの  たごのうらに おくやまに
06 かささぎの  あまのはら  わがいほは  はなのいろは これやこの
11 わたのはら  あまつかぜ  つくばねの  みちのくの  きみがため
16 たちわかれ  ちはやぶる  すみのえの  なにはがた  わびぬれば
21 いまこむと  ふくからに  つきみれば  このたびは なにしおはば
26 おぐらやま  みかのはら  やまざとは  こころあてに ありあけの
31 あさぼらけ  やまがはに  ひさかたの  たれをかも  ひとはいさ
36 なつのよは  しらつゆに  わすらるる  あさぢふの  しのぶれど
41 こひすてふ  ちぎりきな  あひみての  あふことの  あはれとも
46 ゆらのとを  やへむぐら  かぜをいたみ みかきもり  きみがため
51 かくとだに  あけぬれば  なげきつつ  わすれじの たきのおとは
56 あらざらむ  めぐりあひて ありまやま  やすらはで  おほえやま
61 いにしへの  よをこめて  いまはただ  あさぼらけ  うらみわび
66 もろともに  はるのよの  こころにも  あらしふく  さびしさに
71 ゆふされば  おとにきく  たかさごの  うかりける ちぎりおきし
76 わたのはら  せをはやみ  あはぢしま  あきかぜに  ながからむ
81 ほととぎす  おもひわび  よのなかよ  ながらへば  よもすがら
86 なげけとて  むらさめの  なにはえの  たまのをよ  みせばやな
91 きりぎりす  わがそでは  よのなかは  みよしのの  おほけなく
96 はなさそふ  こぬひとを  かぜそよぐ  ひともをし  ももしきや

リディア:百人一首について訊かれる事として、女性が詠んだ歌、僧侶が詠んだ歌、それぞれの数があるわね。
犬   :ピンク色で示したのが女性の歌で、21首。茶色は僧侶の歌で、13首。ですが、定説では僧侶の歌は15首ある事になっています。Wikiでもそうなっていますね。
リディア:しかも、負犬山くんは、僧形に見える肖像画が描かれた絵札を数えたのだと思うけれど、その中の1人はどうやら琵琶法師で、僧侶ではないとする説もあるのよね。よって12首論もあるの。
犬   :定説通り15とする場合、琵琶法師とも言われる蝉丸の他に、晩年に出家した貴族2人を含めるのでしょう。…では出家した上皇は数えなくていいの? と。
リディア:さらには、今度は女性の中に持統天皇を数えない論、その上、内親王も臣籍の女性と区別する論まであるのよね…。
犬   :こんな状況ですので、両者の数を問うのは、クイズとして適切じゃないのですが…、アンサーアンサーで出題されたような記憶がおぼろげながら…。
リディア:対処しておきたいなら、いちおうは定説に沿っておけばいいかしらね。
犬   :アンサーアンサーは、Wikiだけを頼りに作問している気がしますからね。
リディア:うわあああ!
犬   :では、今日はここまでです。



posted by 負犬山禎之丞 at 22:47| Comment(0) | 朦朧堂、衒学の間 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]