2009年07月30日

今日の解説 「丑の日」

犬   :リディア先生! リディア先生っ!
リディア:あら負犬山くん。今日はなんだか大慌てしているようね?
犬   :だって、ジョーク問題をいつまでも放ったらかしにしてたら、本当に怒られそうですから!
リディア:では、話の枕にするネタもない事だし、さっそく始めましょうか。

  土用の丑の日に食べるといいもの。
   うどん うなぎ ウズラの玉子 宇治金時 宇都宮の餃子
   梅干し うまい棒 瓜 ういろう ウインナーソーセージ

リディア:そもそも奈良時代にはすでに、夏にはうなぎがいいと言われていたらしいの。でも今のように、土用とは関係なく、なの。その頃にはまだ、日本には陰陽五行説が広く伝わっていなかったと考えられていて、そうだとしたら、土用など五行説に基づいた歴節もなかったはずなのね。
犬   :『万葉集』に、それも編者と見られている大伴家持(オオトモノヤカモチ)が詠んだ、うなぎの歌が収められています。「石麻呂にわれもの申す夏痩せに良しと言ふものぞむなぎ取りめせ」
リディア:「石麻呂さん、夏痩せにはうなぎがいいそうですから、お召し上がりになってはどうでしょうか?」というところかしらね。
犬   :このように、伝承俗説の類として知る人があったのは確かですが、実際に、夏だからとうなぎを好んで食べる習慣や流行が広まっていたとは考えられないんです。
リディア:この歌に続けて、同じ家持が詠んだ「痩す痩すも生けらばあらむをはたやはたむなぎを取ると川に流るな」が載っているのよね。
犬   :「痩せてしまったって、生きていればそれでいいじゃないですか。(お歳なんですから)万が一、うなぎを取ろうとして川で溺れたりしたら大変ですよ」という訳で大丈夫だと思いますが…。
リディア:大伴家持は、三十六歌仙に数えられた歌人でもあり、越中守などの地方官を経て、中納言にまで昇進した大官でもあったの。彼と面識があった石麻呂翁も、ある程度の教養人か、高官かだったでしょうね。…うなぎ食の習慣が広まっていたなら、老高官がわざわざ自分で取りにいくまでもなく、食膳に出されていたと思うのよね。
犬   :ここまでの事をまとめますと、夏にうなぎ、という説は、土用と関係なく言い伝えられたもので、習慣と呼べるほど浸透してはいなかった、というところですね。
リディア:さて、今のように、夏の土用の丑の日にうなぎが結びついたのは、時代が下って、江戸時代の間の事と考えてよさそうなのね。
犬   :反証がない、ってだけでもありますけどね。
リディア:ただし、平賀源内が関わっているという説が本当かどうかは、何とも言えないわね。
犬   :これも、他に諸説あって、どれにも確証がないってだけですけど。
リディア:いくつかある説の、多くのものに等しく見られるのが、土用の丑の日には、うのつくものを食べると夏負けしない、という言い伝えなの。
犬   :これがいつ頃から、どこの地域で言われ始めたのかは、今や定かではありません。…まあ「イワシの頭も」と言われる類の伝承でしかなく、根拠に裏打ちされたものではありません。
リディア:この言い伝えを今に活かしたなら、うがつけば何でもいい、別に昔からあったものではなくても、と言えるのよね。
犬   :…まあ、ジョークですから……ははは……。
リディア:ただ、今だったら、うなぎが含む栄養価になる事に注目して、うなぎ食は理に適っていると言えるのだけれど、江戸時代にはそうではなかったようね。
犬   :平賀源内説を初め、うなぎを食べる習慣を、言い伝えに絡めて広めたという説には、夏に売れないうなぎをどうにかしたかった、という話が必ずついています。
リディア:どうして、夏には売れなかったか。…古来から魚食に親しんでいた日本人は、もう江戸時代までには、夏はうなぎが旬になる時期ではない、ってわかっていたのだと思うのよね。
犬   :今のように養殖ものが出回るなら、季節を問わずおいしく食べられるように育てるでしょう。ですが天然ものは、長い冬眠に備えて栄養を蓄えた季節が、一番おいしいんだそうです。
リディア:逆に夏は、生き物だって夏バテ気味で、いちばん栄養に乏しい時期だそうよ。だからね、丑の日にうなぎ、と言われ始めた時点では、あの言い伝えに沿っただけの事で、このクイズと一緒で、根拠なんかないこじつけ、音合わせでしかなかったはずなの。
犬   :他の説には、「うし」の二字が、二匹のうなぎがのたくっているように見えるから、なんてのもありますしね。
リディア:まあ、選択肢に出された食べ物を全部並べて、どれを食べたいかって訊かれたら、やっぱりうなぎだとは思うわね。
犬   :…ハイエルフでも、あんな脂ぎったもの食べるんですか?
リディア:ライフスタイル担当としては、味わって知っていないといけないでしょう?
犬   :…筋は通ってるかな…。ああ、ところで、養殖だからおいしくない、やっぱり天然、と言われる事もありますが、どうやらそれも思い込みでしかなさそうですね。
リディア:というわけで、怒られずに済みそうな解説をこじつけてみたわ? 今回の選択肢は、全部正解。うなぎもいいけどうまい棒もね?
犬   :やがて、SFの事が現実になった時代には、土用の丑の日には宇宙食を食べるようになっているかも知れませんね。
リディア:では、今日のクイズは何かしら?
犬   :はい、歴史からの積み重ねクイズで1つ。

  満70歳以上まで生きた人物。
   夏目漱石 毛利元就
   豊臣秀吉 伊藤博文
   北条時政 杉田玄白
   伊達政宗 近松門左衛門
   伊能忠敬 法然

犬   :アンサーアンサーで「自殺した人物」みたいな問題があったんですよ。
リディア:えー?
犬   :それは題材としてどうなんだろう、と感じて、この問題を作ってみたんですけど…、我ながら、答えてみるのが面白いかどうか怪しく思えます…。
リディア:この形式は、全部答えられなくても得点できうる面白さがある一方で、知らなければ勘に頼るしかない問題が多くなりかねない欠点もあるわね。
犬   :まあそんなわけで、お気軽に挑戦して下さると嬉しく思います。
リディア:では、今日はこれまでです。


解説編へ          
朦朧堂・衒学の間 目次へ  

posted by 負犬山禎之丞 at 21:18| Comment(0) | 朦朧堂、衒学の間 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]