2009年07月18日

今日の解説 「3つ重ねろ」

犬   :リディア先生! リディア先生っ!
リディア:あら負犬山くん。今回は、普段より少しペースが速くないかしら?
犬   :思わぬ形でコメントがつきましたからね。本当は昨夜のうちに投稿しようと思ったんですが、CSの全英オープン中継に見入っちゃって…。
リディア:あー、ゴルフはいつまで経っても終わらないものね。
犬   :タイガーがティーショットを打った瞬間に、ギャラリーが何か叫ぶのは、しきたりか何かなんですかね?
リディア:違うと思うけど……。
犬   :まあ、ちょっと贔屓にしている、フィジーのシン選手が上位通過したんで何よりです。
リディア:へえ。どうしてまた?
犬   :あまのじゃくクイズで彼を選んで単独正解して、そこで得た☆を守りきって決勝に出た事がありましたんで。
リディア:…何事もクイズ中心なの、あなた?
犬   :そうですねえ…。ではそろそろ、僕のライフワークになりつつあるクイズの解説を始めましょう。
リディア:ささやかなライフなのね!?

  耳なら「薄く切った肉」
  鹿なら「粗い」
  車なら「凄まじい響き」
  では、木なら?

リディア:これは「凄まじい響き」を意味する一語を、車という字を使って書けると気づいたら、もう答えは見えるわよね?
犬   :そうなんですよ。「轟」のように、問題にあげた字を3つ重ねると、問題にあげた意味を表す一字になる、という事です。
リディア:ならば、木の字を3つ重ねると…、森よね。
犬   :まあここでは、それで正解と言ってもいいんですけどね。
リディア:ん?
犬   :厳密には「樹木が密集しているところ」などが正解です。
リディア:ああ、「もり」と字の読み方を答えるのではなく、他と同じように、意味を答えなさいという事ね?
犬   :ええ。…ここの読者さんに、受験生や学生の心当たりはありませんから、気にしないでもいいんでしょうが…、学生の頃、英文学の試験で「alliteration とは何か説明しなさい」という問題に「頭韻」と答えた人達がまとめて×を喰らってた事を思い出しまして…。
リディア:英文和訳じゃないんだから…。「詩文において、並び合う2行またはそれ以上で、冒頭の子音を揃える修辞技法」とでも答えればいいのかしら?
犬   :そうですね。ただ今回は、意味の説明を求める問題じゃありませんから、森でも正解とします。
リディア:さて、他の字についても説明しないとね。
犬   :まずは…、森、はいいですよね? というわけで「轟」
リディア:音読みはゴウ。大きな音とか、響き渡るといった意味が主だけれど、元々は特に、たくさんの車が立てる騒音を指していたと言われるの。
犬   :馬の字を3つ重ねて、軍隊の移動などで多くの馬が足音を立てる様子を表した一字がありまして、これも「とどろき」と読みます。もしかすると、とどろくと言う言葉が始めに持っていた意味は、こちらかも知れません。苗字で「八十八騎」と書く「とどろき」さんがいるそうです。
リディア:苗字などの固有名詞では他に、舎利弗、等々力、二十六木、廿六木などの書き方があるの。…最初のは由来がよくわからないけれど、あとのは宛て字のようね。
犬   :とお、とお、ろっ、き、でしょうかね。
リディア:轟の意味は、他に…、やかましい、大きな音を立てて壊す、爆発させる、爆破する、有名になる、どきどきする、非常に、などがあるわね。
犬   :続いては「聶」 音読みはジョウ、ショウ、チョウ。意味は、まあ問題にあげた通り「薄く切った肉」でもありますが、第一義じゃないんですよね。
リディア:近代以降の日本では、くちへんをつけた字が使われるようね。そう、囁くという事。
犬   :他に、取る、整える、皺が寄る、合う、木の葉が風に揺れる、という意味があります。
リディア:最後に…、これ、いちおうフォントにもあるけれど、PC上で一字にしたら潰れちゃうわね…。
犬   :そうですね…。では

   鹿
  鹿鹿

犬   :…こんな感じで…。
リディア:音読みはソ。意味は、粗い、詳しくない、雑である、粗末である、激しい、遠ざかる、ほぼ、大きい、粗布、藁靴、玄米など。
犬   :これだけ多様な意味が伝わってるって事は、昔はそれなりに使われていたって事ですよね…。
リディア:総画数は33画。机上版の漢和辞典では、ほとんどのもので、もっとも画数の多い字として収められているはずね。
犬   :僕が中学生の頃に使ってた辞書で、初めて見まして、それから長い事ずっと、いちばん煩雑な字だと思ってました。
リディア:ところが、そうではないのよね。
犬   :ええ。…それが、4頭集まるとおしゃべりになる想像上の動物でして…、

  龍龍
  龍龍

犬   :こんな一字があります。音読みはテツ。意味するものが「多言」 つまり、口数が多い、おしゃべり、という事です。
リディア:64画ね。大修館の大漢和辞典には載ってるわよ。
犬   :轟を除き、これまでの字すべてに、訓読みがなかった事からして、いずれも日本では多用されなかったものと思われます。…中国でも、さすがに常用される事はなかったと思いますけどね…。
リディア:最近になって、日本では、吟醸酒の銘柄に使われたわね。
犬   :上等の米を、手間を惜しまずに仕込んだ逸品を、気の知れた仲間同士、おしゃべりしながらお楽しみ下さい。…というような売り文句がついてました。「おしゃべり」の意味は違っていますが、なかなか上手い事を言ったものだと思います。
リディア:気が向いたら、「龍龍龍龍」で検索してみるといいかしら。
犬   :龍の字には他にも、2つ、3つと組み合わせた一字があるようです。この件もヒットしますよ。
リディア:リュウ、トウ、テツ、と読む組み合わせで並べると、龍の数は7頭になるというわけね。
犬   :…しかし、一説によると「テツ」より画数の多い一字があるようですね…。
リディア:84画だったかしら。もはや、ちょっとしたピクトグラフよね。とても一字として書ける気がしないわ…。
犬   :はい、そんなわけで今日は、漢字にまつわる雑学をかじってみました。そして今日のクイズもまた、漢字に関する積み重ねクイズです。

  部首が一画の漢字。
   二 三 千 串 主 乏 乾 事 交 正

リディア:学者の中には、部首という考え方自体に異議を唱える人もいるのよね。
犬   :例えば「へん」と「つくり」 字によって左側を重視したり、右側に重きを置いてみたりと、統一感がなく恣意的な分類でしかない、とか、そもそも、左右に分かれるように見えても一字なのだから、分けてしまってはいけないのだ、とか。
リディア:漢字には一文字一文字、成り立ちがあるのだけれど、部首は必ずしもそれに沿っているわけではなく、字の一部だけに注目したものでしかない、とかね。
犬   :それを言い始めると、漢字学習が大きく後退しかねないんですけどね…。
リディア:だけどね、学習の場でも、学年が上がるにつれて、部首なんて意識しなくなっていくのも事実でしょう?
犬   :そうなんですよね。…なくしてしまうと大変そうだけど、やっぱり変、といった感じですかね。
リディア:みんなも、答えを聞いたら「えー?」と思うものもあるかも知れないわね。
犬   :ではみなさん、「え」の形に口を開けて待っていて下さい。
リディア:えー?


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posted by 負犬山禎之丞 at 21:20| Comment(0) | 朦朧堂、衒学の間 | 更新情報をチェックする
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