2009年04月12日

今日の解説 「命数」

リディア:みなさーん、忘れた頃にやってくる、無責任クイズ答え合わせの時間よ。
犬   :まずは前回の出題をおさらいしましょう。

  1以下の数にあたる「命数」
   清浄    京
   ゼプト   漠
   曖昧    グーゴル
   模糊    沙
   恒河沙   不可説不可説転

犬   :…たまには、まったくWikipediaを参照しないで作りたかったんですが、ちょっと当たってみたら、知らなかった命数が見つかってしまって、結局半分はwiki頼みに…。
リディア:日本で使われる命数は、江戸時代に著された『塵劫記』という算術書に載っているものが、現在でもそのまま使われていると言っていいわね。
犬   :和算を大成させた関孝和も、この本を頼りに独学で算術を学んだと言われています。…まあ現在に通用しているというのは、対抗馬になり得る書物が出なかった事と、兆より大きい命数、また厘より小さい命数は滅多に使われないため、新しいものが提案される事がなかったからかも知れません。
リディア:数について書かれた本には、『塵劫記』やそこで紹介された命数は、まあ十中八九載っているわ。そういう本を持っていなかったら、Wikipediaで「命数法」を引いてみたらいいわ。
犬   :解説もwikiに丸投げ…、
リディア:上にあげたものくらいは、ここで押さえなさいよ。
犬   :はい…。まず、上記のうちで、塵劫記にあるものは6つです。清浄、京、漠、模糊、沙、恒河沙です。
リディア:という事は、この間言っていた、命数ではない1つとは、模糊と同時に使われる事が多い曖昧、ね。
犬   :アンサーアンサーの多答クイズでは、似た選択肢があったらどっちかは正解、というヒント内包問題もよく見られますんで、真似てみました。
リディア:書いた順に解説するなら、まず清浄だけど…。
犬   :先に、聞いたことがあるかも知れない、京から入ります。…本当はここ、億とか兆とかにしようかとも思ったんですよね。
リディア:命数、という言葉そのものが、耳慣れないものでもあるから、ニュアンスを掴んでもらうに、よく知られているものを入れておこう、という事かしら?
犬   :はい。…で、京(ケイ)は、兆の上にくる命数です。
リディア:そうとわかれば、明らかに1以上ね。
犬   :これを、キョウと呼ぶ場合もあります。余談になりますが『宇宙鉄人キョーダイン』は、スカイゼル、グランゼルの「兄弟」と、力の単位「ダイン」の1京倍とをかけた命名だったそうです。
リディア:1ダインとは、1グラムの物体に1センチメートル毎秒毎秒の加速を与えられる力の大きさの事。つまり1京ダインの力が加わると、1京センチメートル毎秒毎秒の加速度で動いていく事になるわね。
犬   :…ええと、100兆メートルだから、1000億キロですね。1秒目には秒速1000億キロ、2秒目には秒速2000億キロ、3秒目には秒速3000億キロ…、という事です…よね? まあいいや、次。
リディア:他5つの中で、1より大きい「大数」を表しているのは恒河沙(ゴウガシャ)だけね。これは10の52乗にあたるの。ガンジス川の砂の数、という意味がある、仏教由来の言葉なのよ。
犬   :そうなると、後の4つは1以下の「小数」を指しているわけです。大きい順に紹介しますと、「沙(シャ):1億分の1」「漠(バク):1兆分の1」「模糊:10兆分の1」「清浄:10垓(ガイ)分の1」
リディア:垓は、大数で京の上に当たるものなの。10垓は1000兆の10万倍で、1を10垓で割った値である1清浄は、小数点以下21桁の数になるわね。
犬   :なお、野球の打率などを思い出していただければ、直感できると思いますが、小数の側では、10分の1になるごとに、命数が変わります。
リディア:1万倍ごとに、万、億、兆、京…と変わる大数とは、用法が違うのね。
犬   :さて、これで6つと、命数ではなかった1つとが済みました。後の3つは、横文字のゼプト、グーゴル、そしてわけわかんない不可説不可説転、ですね。
リディア:漢字を使っているのからやろうかしら?
犬   :そうですね。…Wikipediaによると、仏典の1つ『華厳経』の中に、大きな数に関する記述があるそうです。そこから塵劫記に採用された命数もいくつかありますね。同じ命数でも、表す大きさは異なっていますが。
リディア:不可説不可説転の具体的な大きさは…、wikiに丸投げしましょう。そもそも、説明のしようがないほど大きい数、という意味だものね。
犬   :まあとにかく、1より大きい数ですね。なお、転、という字には「ますます」の意があります。
リディア:あとは横文字の2つ。…某ネットサービスが社名に借りた方からやる?
犬   :はい。1グーゴルは10の100乗を表します。これも詳しくはwikiでどうぞ。
リディア:手を抜き始めたわね?
犬   :最後に残ったゼプトは、塵劫記にある清浄と同じ大きさ、10垓分の1を表します。wikiでSI接頭辞について引きますと、1991年に国際標準として採用された旨が書かれています。よく見ると、この時採用された4つは、大数のゼタと小数のゼプトと、同じくヨタとヨクトと、逆数にあたるもの同士、同じ頭文字で揃えられていますね。
リディア:逆数、というのは、かけると1になる2つの数ね。
犬   :なお、SI接頭辞の種類を問う問題は、アンサーアンサーでも出題されます。軽く覚えておくといいでしょう。
リディア:さて、と。これでクイズの説明はお終いなのだけれど…。
犬   :…何か、気になるんですか?
リディア:さっき、野球の打率など、って言ったじゃない? あそこで、割、はどこへいったのよ、って思った人もいると思うの。
犬   :ああ、そうかもしれませんね。ではついでに軽く触れましょうか。
リディア:もともと、金利などの、歩合を表すために使われていた、単位であって、命数ではないのよね。
犬   :法外な利率の例として昔から使われていた「トイチ」は、借りてから十日で利息1割、すなわち元金の10分の1に達するという意でしたね。
リディア:大きさとしては10分の1を表すのだけれど、あくまでも、10分の1が基準値である、単位なの。
犬   :10分の1を1とする、と言えばいいですかね。
リディア:ここに、小数を表す命数を併用する時には、例えば1分なら、…言葉の綾っぽくなっちゃうけれど、10分の1の10分の1と考えるのが正しくなるのね。値は同じでも、100分の1と考えてはいけないの。
犬   :分以下の、数の呼び方であるものと、特別な使われ方をする数である単位とを区別しなくなったというか、混用されているというか、今はそんな状況なんですね。
リディア:だから、例えば3割3分3厘を記数する場合に、打率などでは.333と書くけれど、本当は間違いなの。こう書いた時の正しい読み方は、3分3厘3毛なのね。
犬   :どうしても、割を使いたいなら、3.33と書くのが正しいんです。…まあ、直すべきだとか今さら言う気はありませんけど。
リディア:さて、最後に…。今日テーマにした「命数」と同音異義の言葉に「名数」というものがあるの。これは、特徴や属性が似たものをいくつか、まとめて呼ぶ時の名前の事を意味しているのね。
犬   :当堂の読者さんに馴染みの深い例は「三冠」でしょうか。四天王や七福神、日本百景など
リディア:待って。漢数字が頭についた言葉だけを指すのよ。だからその場合は「百景」だけが名数という事になるわ。
犬   :うう、勉強になりました…。
リディア:…今日は、このくらいでいいかしら。
犬   :すみませんが、今回は出題をお休みします。
リディア:いつもお休みしているようなものだけれど?



posted by 負犬山禎之丞 at 22:17| Comment(0) | 朦朧堂、衒学の間 | 更新情報をチェックする
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