2008年08月11日

癒しの道はマイウェェェッ! 09

これまでのマイウェェェッ!
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「お久しぶりです〜、プロデューサーさ〜ん」
 ええ、お久しぶりです、あずささん。
「……」
 ……。
「………」
 ………。
「あの〜、プロデューサーさん?」
 は、はいっ! 何でしょう!?
「どうして、前回からこんなに間が空いてしまったんでしょうか〜?」
 …うう、さすがのあずささんも、心なしか目尻がつり上がってるな…。ええとですね、『太閤立志伝5』医師プレイをするにあたって、重要でありそうな情報を検証していたんです。
「ええっ!? そ、そうだったんですか〜」
 はい。このゲームでは、芸術家および南蛮人を除き、登場するすべての人物が病気に罹り得ます。ですが中には、病気の時に会いに行っても、診察コマンドが出ない人物もいるんです。
「そんな…。それでは、せっかくお医者さんになっても、助けてあげられません〜」
 そうですね。…しかし、そんな人物でも、訪ねた初めは普段通りに振る舞っていたのに、ある事をするといきなり咳き込み始めて、診察できるようになる場合があるんです。
「そうなんですか〜」
 例えば、プレイヤーキャラが仕えている大名、また忍びの頭や海賊の頭領ですね。方針を尋ねたり、意見を具申したりするコマンドは普段通りなんですが、手合わせ、つまり模擬戦を挑むと診察モードに移行するんです。同じく手合わせが有効なのが、道場の師範ですね。
「で、でも〜、私は武力が低いですから〜」
 安心して下さい。薬を飲ませれば、その日1日寝てしまいますから、実際に手合わせは行われません。
「よかったです〜」
 同様に、診察コマンドが出ない人物には、商家の当主、医師、茶人、そして実在した僧侶。まあ、特定の施設を訪ねると応対してくれる人達ですね。
「それでは、その人達にも、お手合わせをお願いすれば…」
 いえ。彼等は武芸を専らとする職業ではありませんから、手合わせコマンドが出ません。ただ、商人は茶会コマンドが替わりになりそうな気がするんです。
「そうなん…、あら? 気がする、だけなんですか〜?」
 はい。それを試そうと、店持ち商人が病気になるのを待ったり、他の職業では代替コマンドがないものか、やはり病気になるのを待ったりしていたんですが…、
「す、すみませんでした、プロデューサーさん…」
 はい?
「私のお医者さん日記を完成させるために、こんなに時間をかけて、一生懸命調べていたなんて…」
 いえ…、あの…、実は…。
「私、恥ずかしいです〜。てっきりプロデューサーさん、もうゲームに飽きて、私の事なんか忘れてしまったのかと、勘違いしていました〜」
 す、すすすすみませんっ! 検証の途中で飽きてましたっ!
「………」
 う…、うう…、そんな目で見ないで下さい…。あああ、目を潤ませたりしないで下さいっ!
「やっぱり…、私の事なんか忘れて…」
 ちっ、違いますっ! あずささんの医師道は、ちゃんと1つの区切りを迎えさせましたから!
「…本当に、ですか?」
 うあ…、今の…。あずささんがそんな、小動物のような目を見せるだなんて思ってもみなかった。…大きく動く物が2つついてるのは知ってたけど…。
「……どうしたんですか…? …答えて下さらないという事は、やっぱり本当は…。
 あああごめんなさい勘違いしないで下さい! 今から、あずささんの癒しの道、その最終盤をお話ししましょう!
「はい〜」
 病んだ人々を診療所で待つだけでなく、より多くの人々を救うために、全国行脚を始める事に決めたあずささんは、まず手始めに、小田原の町を離れ、文化、政治の中心である畿内へと拠点を移しました。新居を構えたのはは石山の町、今の大阪です。
「ラジオの収録にも便利ですね〜」
 いや、そういう系統の話は、今はナシにしましょう。…さて、結局この引っ越しは意味なく終わったんですけどね。
「……」
 いや、あの…。西国へ向かう際には都合がいいだろうと思ったんですけど、そっちへ行く前にエンディングを迎えちゃいまして…。
「……」
 ……えー、さて…。これからの旅で診療を施す事になるのは、主に名の知れた武将や商人、時によっては忍び集や海賊を診る事にもなります。ですから、彼等と親交を深めるための、贈り物として有効そうなアイテムを買い込みました。また同じ目的で、茶道の技能にも磨きをかけました。
「…お医者さまをするのも、大変ですね〜」
 あー、実はこれも、親密度を上げる必要は必ずしもなかったので、結局意味なかったんですが。
「……」
 …アイテム買うために、時間を費やして所持金を増やしてもいたんですが、これも……。
「………」
 ま、まあ、そんなこんなで準備は万端。いよいよあずささんの旅が始まりました。
「困ります〜プロデューサーさん…、そんなところ…」
 寝てないで下さい! おまけに、なんて夢見てんですか! …え、ええと、まずは、織田家の新たな拠点となったばかりの岐阜城を目指します。旧斉藤家の主立った家臣団を引き入れ、また後の将軍、足利義昭公と共に越前朝倉家から移ってきた武将達も傘下に入り、その時点でもっとも多くの武将が住んでいた城ですから、さぞや病人も多いでしょう。
「あの…、プロデューサーさん?」
 何でしょう?
「そんなに病気の人が多いお城って、なんだか悪い病気が流行っていそうなんですけれど〜」
 ……確かに、下痢や腹痛を訴える武将が多かったような……。
「……」
 まあいいや。2日で6人もの病を癒して、今度は越前朝倉家を経て、越後の上杉家を訪ねました。さらに羽州を北上し、陸奥の国を経て奥州路を南下。南部家、伊達家などの大大名家を癒して回りました。
「大旅行になってしまいましたね〜」
 そして関東へ…と思ったのですが、東半分では佐竹、里見、宇都宮などの小大名が林立し、西半分は上杉と北条との小競り合いが続く、という状況では、一つ一つの城にいる武将がそれほど多くありません。ですから一気に北関東を横切って甲州、武田家を再訪。そこから南へ向かい、小田原の北条家を訪ねました。
「懐かしいですね〜」
 まだ小田原を離れて1年経ってませんよ? …さて、日本を半周したあずささんは、いったん石山へ戻ろうと、東海道を西へ上りました。途中で三河の徳川家、そしてまた織田家に立ち寄って、最後に近江の浅井家へ。
「お知り合いも、たくさん増えました〜」
 はい。小田原時代から通算して、この時までにあずささんが癒した人数は50を超えました。医師としてなかなか名も知られてきて、「上医」と呼ばれるようにもなりました。
「嬉しいです〜」
 また、正確無比な診察と処方を繰り返してきた成果として、医術技能がレベル5になりました。
「レッスンでは、レベル4まででしたね〜」
 まあ、軍事系や政治系、算術系の技能と違って、レベルが上がっても診察の効果が高まるわけではないんですが、マスクデータである医師名声は上がっているでしょうね。
「では、いったんお家へ帰りましょう〜」
 はい。住み慣れ…る暇もなく後にした新居。あずささんは、しばしゆっくりとくつろいで、長旅の疲れを癒します。そして今度は西国への旅に出ようかとも思いましたが…、その前に一度、この町でも医者の看板を上げておこうと、診療所へ向かいました。
「町のみなさんの事も心配ですからね〜」
 …ところが、診療所で待機していたあずささんを、最初に訪ねてきたのは、どうも町の人ではなさそうな、十代半ばほどの美少年でした。
「まあ……」
 武家の者と見える身なりからして、どこかの大名家に仕える小姓のようですが、いささか長旅をしてきた様子からして、近隣大名の使いではないでしょう。
「いったい、どなたなのでしょう〜?」
 彼が、あずささんの運命の人でした。
「え、ええっ!? そんな…、年下なのに…」
 あ、ああ、間違えました。あずささんの運命を決める人でした。…話を聞けば、あずささんゆかりの小田原を統べる、北条家から遣わされてきたとの事です。
「あら〜、そんな遠くから、私の診察を受けにきたんですか〜」
 使者だって言ってるでしょう! あ、あと、使者と死者とを勘違いしたボケはナシですからね!
「………あ、なるほど〜。面白いです〜」
 だーかーらー! 今は俺、駄洒落言ったつもりありませんよ…。その気があったら、死者の使者が支社で試射した、くらい言ってますよ。
「それで、どんなご用なのでしょうか〜?」
 スルーされたっ! …どうやら北条家は、あずささんを典医として招きたがっているようですね。
「……えーと〜……」
 要するに、お抱え医師になってくれ、って事です。
「わ、私が、大名さんをお医者さまだっこするんですか〜?」
 想像だにしなかった誤解だ! しかも、触診すると見せかけて正面から抱きつくくらいしか絵が浮かばない! …あのですね、つまり、城に住み込んで、大名と、その周りの要人達を専門に診る医者になって欲しがってるんです、北条家は。
「あら……まあ、どうしましょう〜」
 小田原の城は、上杉謙信率いる10万の軍勢でさえ、手も足も出せなかった堅城です。そこを拠点に、北条氏は関東の半分を直轄し、残り半分を修める諸大名にも圧力をかけています。その典医として召し抱えられる、しかも先方から選ばれて、請われての事ですから、あずささんは関八州で筆頭の医師という事にもなりますね。
「…プロデューサーさんと一緒に目指してきた、アイドルお医者さまの頂点に、これで立てるんですね…。わかりました〜。そのお話、お受けしましょう〜」
 え?
「…え、って…」
 …まあ、それもいいですね。…かくして、役目を果たした小姓は小田原へ帰還。後日あずささんも、小田原城主北条氏康に目通りを果たし、典医の役に就きました。…これにて、あずささんの癒しの道は、一つの終着点を迎えたのでした…。
「ふう〜。思っていたより早かったですね〜。4年と少しでした〜」
 ええ、まあ、医師エンディングとしてはいちばん手早いものですから。
「そうなんですか〜」
 実を言うと、ゲーム的には、あの誘いは断るのが正解なんです。
「え、ええっ?」
 城住まいをするわけですから、すぐ近く、小田原の町で重病人が出たとしても、あずささんの耳には入らなくなります。救えた命をいくつも落とさせる事になりますね。
「…そ、そんな…」
 あの小姓さんでさえ、断った方が喜ぶくらいですから。…ただ、ヒロインがあずささんである限りにおいては、典医エンディングもアリかな、と思いました。
「…どういう事ですか〜?」
 まずは、エンディングのあらましを、順を追ってお話ししましょうか。…こと健康、養生の面では、大名直々の諮問を受けてあずささんが立てた方針、あずささんが示した意思が、北条家中の誰もが従うべき、絶対の指針になりました。
「え、え、ええっ!?」
小田原城内はもちろん、西関東に点在する支城に住まう家臣団から、合わせて十万を超える居兵の一人一人までが、あずささんの指導の下、健康な体を保とうと心掛けます。
「な、なんだか、話が大きすぎて、気後れしてしまいます〜」
 その結果、北条の兵は、他国のそれと比べて根本から精強になりました。そしてそれは、北条領内をいちだんと安定させる事にもなりました。
「よかったです〜。…でも、町のみなさんを病気から救ってあげられなくては、やっぱり…」
 そう考えたあずささんは、典医となって得た俸給のすべてを投じて、医学所を建てました。
「え?」
 医の道を志す若者達を招き入れ、あずささんが知る限りの事を教え伝えて、多くの良医を輩出しました。結果として、あずささん1人では手を回しきれなかった病人も、救う事ができたでしょう。
「ああ…、それなら安心ですね〜」
 そして、…典医エンディングの、締めの一文が、もう、いかにも…ね。

一大名の典医となっても、あずさは万民の母である事を捨てられなかったのである…。


                  癒しの道はマイウェェッ! 完
posted by 負犬山禎之丞 at 21:59| Comment(0) | 朦朧堂、脱線の間 | 更新情報をチェックする
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